Up 「アイヌ利権」史 : 要旨 作成: 2016-12-14
更新: 2019-10-17


    本論考はこれまで,議論対象を明確にするために,ひとが使う「アイヌ」のことばの外延をカテゴリー分けしてきた。

    即ち,「アイヌ系統者」
      • アイヌ
      • "アイヌ" (アイヌ終焉後「アイヌ」自称者)
      • アイヌ系統者であって,アイヌでも "アイヌ" でもない者
    に区分し,この中の「"アイヌ"」に対しつぎのタイプ (面・相・形) を立てる:
      • 同化"アイヌ"
      • 文学"アイヌ"
      • 観光"アイヌ"
      • 政治"アイヌ"
      • 利権"アイヌ"
      • 法人"アイヌ"


    政治"アイヌ" は,"アイヌ"権益の獲得を運動する "アイヌ" を謂う。
    政治"アイヌ" は,彼らを指導・誘導する──彼らを利用しようとする──政治勢力と込みのものである。
    政治"アイヌ" のイデオロギーは,これら政治勢力のイデオロギーである。

    このイデオロギーは,「アイヌ差別」「アイヌの貧窮」を題目に立てることが始まりで,やがて「アイヌ民族」「アイヌモシリ」「ジェノサイド」の題目へ進む。
    これは,運動の内容が "アイヌ" 手当獲得から "アイヌ" 権益獲得へ進むのと対応している。


    政治 "アイヌ" は, 「代表」を装う。
    すなわち,「自分たちの後ろには多数が控えている」を装う。
    ひとは,この装いに騙される。
    そして,彼らを過大に見る。

    一般に,「代表」と「利得」が合わさると,「腐敗」になる:
    • 団体や特定個人に,金が落ちる
    • 団体では,執行部にいる者が金を自由にする
    「腐敗」は,「物は上から下に落ち,その他ではない」の類の,物理である。
    手に入った金の配分先は,自分およびファミリー/取り巻きのほかには存在しない。
    政治"アイヌ" もこのステージを経た。


    政治"アイヌ" の権益獲得運動は,商品経済と行政に取り込まれる。
    この系が「アイヌ利権」である。

    「アイヌ利権」は金の循環の系であり,そして行政からの交付金が金の循環の開始である。
    これまでは,この交付と運用が<丼勘定>と<馴れ合い>でやられていた。
    それがいまは,査定を通った「アイヌ振興事業計画書」に交付金を下す形になった。
    「アイヌ利権」は,この二つのステージを分けて見ていくことになる。

    「アイヌ利権」の前ステージから現ステージへの移行は,「透明化」「合理化」と称されるタイプの<機能化>である。
    「アイヌ振興事業」は,北海道観光に組み込まれる形で成る。
    事業主体は法人格のものになる。
    "アイヌ" はこの法人の員として,「北海道観光」の「アイヌ」の役を機能的に務める者になる。


    「アイヌ利権」で「アイヌ」役をした "アイヌ" を,
      前ステージ:「利権"アイヌ" 」
      現ステージ:「法人"アイヌ" 」
    と,それぞれ区別して呼ぶことにする。

    同化"アイヌ",文学"アイヌ" は,アイヌ系統者の全国拡散により,存在意義を終え消えていった。
    政治"アイヌ" は,運動の題目を失い,"アイヌ" シーンから消えていくことになる。
    こうして "アイヌ" は,法人"アイヌ" と,これに組織されない観光 "アイヌ" (?) の,二種になる。