Up 「アイヌ法」: 要旨 作成: 2016-12-09
更新: 2019-11-25


    幕末,そして明治の時代になって,アイヌの生活はつぎの二つの制約により成り立たなくなった:
     ・外的制約: 和人の入植,土地私有制
     ・内的制約: 《アニミズム社会保護区の住民として生かされる》が可能であったとして,それはアイヌにとっていいことか?

    明治政府は,このアイヌをどうしたものかと考える。
    そして,アイヌ対策を,「アイヌを農業で自立させる」にする。

    「アイヌを農業で自立させる」を進めるために,根拠法を定める。
    それが『北海道旧土人保護法』(1899) である。
    実際,『北海道旧土人保護法』は,「アイヌを農業で自立させるための法」がこれの意味である。 そしてつぎが,これの内容である:
      アイヌに私有地を定める
       ──土地私有制を,アイヌにも適用する

    土地私有制は,商品経済の含蓄 (implication, 必要条件) である。
    『北海道旧土人保護法』には,つぎの含蓄がある:
      「アイヌを商品経済社会で生きられるようにする」


    「アイヌを農業で自立させる」は,うまくいかない。
    アイヌの思考回路は,アニミズムである。
    土地私有・土地運用は,何から何まで新しいことばかりである。
    こうして,悪い土地をもたされてしまうとか,土地の権利を失効するとか,土地を騙されてとられてしまうといったことが,いろいろ起こる。
    中には,成功したアイヌもいるが,それは少数派ということになる。
    実際,成功したアイヌは,早くから和人社会に入り和人文化に「啓蒙」されたアイヌである。


    アイヌは同化しつつ,"アイヌ" に変わる。
    『北海道旧土人保護法』は,使えない法になる。
    そして『北海道旧土人保護法』をやめる論が出てくる。

    このとき,"アイヌ" は,「保護は要らない──自立すべし」と「保護は要る」の二派に分かれる。
    しかし,「保護は要らない──自立すべし」を言えば,これ以上 "アイヌ" としておもてに出る理由は無い。
    こうして,「保護は要る」派が "アイヌ" のすべてになる。

    しかしいずれにしても,『北海道旧土人保護法』は新法に替わらねばならない。 その新法は,"アイヌ" が「手当」を得られるようにする法である。
    こうして "アイヌ" は,新法要求の政治運動に入って行く。
    ここで,「新法要求の政治運動に入って行く」は,これを誘導する勢力──政治勢力および利権──が存在しているということである。

    そして新法を得る。
    『アイヌ文化振興法』(1997) である。
    この法は,「"アイヌ" が手当を得られるようにする法」がこれの意味である。

     註: 「アイヌ学者」に言わせると,『北海道旧土人保護法』は「同化強制法」「差別法」である。
    「差別法」と定める彼らのロジックは,「「旧土人」は差別語!」である。
    一方,『アイヌ文化振興法』は,彼らにとっては,文字通り「文化振興法」である。
    「手当交付」と露骨に言わないためのことばが「文化振興」だということが,彼らにはわからない。
    そして一般者は,アイヌ・"アイヌ" を知らない者であるから,「アイヌ学者」の言を鵜呑みにする。


    「アイヌ法」は,『アイヌ文化振興法』でお終いとなるのではない。
    即ち,『アイヌ文化振興法』から『先住民族法』(2019) に変わる。

    『先住民族法』は,実質的に『アイヌ文化振興法』と変わらない。
    「先住民族」の名分は,使いようがないのである。
    「アイヌ民族」という実体は存在しないからである。