Up 「感染症」対策とこれの限界 作成: 2008-01-10
更新: 2008-01-10


    ネットワークの「感染症」の対策は,つぎの2段階で考えられることになる:

    1. 虫に寄生されないようにする。
    2. 虫に寄生されたことがわかったときは,これを駆除する。


    1.「虫に寄生されないようにする

    感染の仕方には,「誘いの餌」と「注射」の2通りがある ( ネットワークの「感染症」)。

    「誘いの餌」の場合は,つぎのことが対策になる:
    • 「誘いの餌」についての知識を持ち,「誘いの餌」に誘われないよう心掛ける。
    • 「誘いの餌」が自分に届かないようにする (「ファイアウォール」)
    • 餌を食べてしまったときは,入り口で虫を殺す (「ウィルスチェック」)

    「注射」の場合は,つぎのことが対策になる:
    • 「注射」を打たれてしまうような隙を,つくらない。
      例えば,「注射」を打たれそうな場所を固く閉じる。
    • 「注射」を打たれていなかどうかを,つねにチェックする。


    しかし,以上の対策には自ずから限界がある。

    先ず,ネットワークは,「不自由のない通信・すべての者に開かれている通信」を本位とする。 一方,「感染症」予防の方法は通信制限である。 「感染症」予防は,通信そのものを不自由にする。

      確認:最強のセキュリティ対策は,ネットワークを使わないことである。

    実際,ひとは安全と不自由のトレードオフを考える方に向かう。 ──「安全か不自由か」ではなく,安全と不自由の間に折り合いをつけることを考える。


    つぎに,「寄生虫を入り口で阻止」の対策は,人の行うこととしては無理である。

    ウィルスチェック・ソフトは,ウィルスの多様化・新登場に追いつかなくなる。 そもそも,本当に機能しているのかどうか,ユーザにはわからない。 ──実際,ウィルスチェック・ソフトは,これに対するユーザの「信用」で保っているに過ぎない。

    「注射」を打たれていないかどうかのチェックも,実際作業としてはできることではない。

      「すべき」と「できる」は違う。
      国は外国人に不法侵入させないことになっているが,不法侵入はふつうに起こっている。 不法侵入阻止が実際作業としてできることではないからだ。


    2.「虫に寄生されたことがわかったときは,これを駆除する

    いろいろ工夫し,ツールも用いたりして,寄生虫を見つけ出し駆除しようとする。
    しかし,寄生虫は巧妙に隠れている。 寄生虫を見つけ出しこれを潰しても,これで本当にクリーンにできたのかどうかはわからない。 実際,本当の寄生虫を隠すために,わざと囮の寄生虫が見つけ出されるようにしているのかも知れない。

    そこで,セキュリティの教科書ならば,
      「虫に寄生されたことがわかったときは,
       すみやかに患者を隔離し,カラダをゼロから作り直す」
    と書くことになる。

    しかし,実際問題として,これはできることではない。
    現実には,「これ以上やるのは無理」といったところまで寄生虫の駆除をやって,それでよしとすることになる。 (「病気にかかったらゼロから作り直す」は無理)。