Up 3.5.1.1 理論の定式化  


 加法の理論は,文生成システムGの上の理論

T=(G,H,(S,D), (S, D))

としては,以下のように定義される。
  1. Gを,加法に関する等式を生成するシステム (NV,TV,P,SEN) として,つぎのように定義する(註1)
      NV:
      SEN:等式生成に関する
      TRM(註2),N:項生成に関する

      TV={1,+,=}
      P:
      SENTRM=TRM
      TRMTRM+TRM
      TRMN1
      N1
      ε


  2. Gと同値な文生成システムH=(NV',TV,P',SEN) は,
      NV':NVに
        L,R:それぞれ,項の左,右につくことのできる文字列の生成に関する
      を追加。
      P' :
      SENTRM=TRM
      TRMTRM+TRM
      TRMN1
      N1
      ε
      TRM+
      TRM
      ε
      +TRM
      TRM
      ε

  3. Hのシェマシステム S=( H,σ, R) では,

    1. H=( N, T, , SEN) は,
        N=:
        SEN:SEN に対応
        , , , TRM:項シェマ生成に関する
        ,:L,Rに対応


        TV=TV∪{trm(註2)1,λ,ρ}
        P:
        SEN
        TU
        1
        1
        ε
        TRM
        TRMTRM1
        TRMtrm
        TRM
        ε
        λ
        ρ

    2. σ:
      SENSEN
      TRMTRM


    3. 代入規則は,原初的代入規則。

  4. Dでは,
    1. 変形補助記号は無し。
    2. 変形規則は,
        (a0) ε → 1=1
        (a1) 11 → 1+1
        (a2) 11+ → 1+1
        (a3) = → 1=1

  5. Sは, S#=( G#,σ#, R#) の G#に対し,終端記号に

    txt
    を追加し,プロダクションに
    TXTTXT1
    TXTtxt

    を追加したもの。

  6. DD#に同じ。即ち,φを txt^ あるいは /,ψを ^txt/ あるいは / ──但し,/ は,テクストの端を表わすメタ記号──とするとき(註3),(4-2) の
    (a1) に対応して,
    Φ:φtrm=λ11ρψ に対し,
    Φ → Φ^trm=λ1+1ρ
    Φ:φλ11ρ=trmψ に対し,
    Φ → Φ^λ1+1ρ=trm
    (a2) に対応して,
    Φ:φtrm=λ11+trm1ψ に対し,
    Φ → Φ^trm=λ1+1trm1
    Φ:φλ11+trm=trm1ψ に対し,
    Φ → Φ^λ1+1trm=trm1
    (a3) に対応して,
    Φ:φtrm=trm1ψ に対し,
    Φ → Φ^trm1=1trm1




(註1) これは,つぎのように述べられた“式の生成規則”と同じ(§1.6.2.1, 1.6.2.2参照):
    1°1は項である;
    2°項Uに対し,U1は項である;
    3°項U,Vに対し,U+Vは項である;
    4°項U,Vに対し,U=Vは式である;
    5°1°から4°を有限回適用して導かれる式のみが,式である。
(註2) TRM,trm は,“TeRM(項)"。

(註3) ここでのΦ,φ,ψは,メタ記号である。メタ記号を用いて記述が長くなるのを避けたわけであるが,メタ記号を排除して理論の本来の記述に直すことは,容易である。
 例えば,(a1)に対応する規則をきちんと書けば,つぎのようになる:

txt^trm=λ11ρ^txt1txt^trm=λ11ρ^txt1^trm=λ1+1ρ
txt^trm=λ11ρtxt^trm=λ11ρ^trm=λ1+1ρ
trm=λ11ρ^txt1trm=λ11ρ^txt1^trm=λ1+1ρ
trm=λ11ρtrm=λ11ρ^trm=λ1+1ρ
txt^λ11ρ=trm^txt1txt^λ11ρ=trm^txt1^λ1+1ρ=trm
txt^λ11ρ=trmtxt^λ11ρ=trm^λ1+1ρ=trm
λ11ρ=trm^txt1λ11ρ=trm^txt1^λ1+1ρ=trm
λ11ρ=trmλ11ρ=trm^λ1+1ρ=trm