Up はじめに 作成: 2011-01-17
更新: 2011-01-18


    自然数の積,分数の積,正負の数の積,複素数の積は,求積のアルゴリズムが異なる。しかも,ひどく異なる。
    ひどく異なるのに,なぜひとしく「積」なのか?

    このことは,「数」の意味,「量」の意味に考えを及ぼしてはじめてわかることである。
    しかし,これを行うのは簡単でない。
    そこでたいていは,自然数の積を扱えれば「積」がわかっているということにしてしまう。 そして,「積」の数学の道を自ら閉じる。

    ここで「積」は,一例として挙げているに過ぎない。
    「数」に伴ういろいろな主題がこんな具合である。


    そこで本テクストを以て,「数」の意味, 「量」の意味に考えを及ぼすことを行う。

    論述は,できるだけ短く簡単であることに努める。
    不足を埋めることより,論の見通しをよくすることを優先しようとするためである。

    数とは何か?」への答えがどのようになるかも,テクストを読みやすいように,はじめに述べておこう。
    数とは何か?」への答えとして本テクストで示すものは,数学の答えである。 そして「数は量の比」が,数学の答えである。


    「数は量の比」が答えであり,そしてこれが数学の答えであることは,特に学校数学を考えるとき,強調されねばならない。 というのも,学校数学は「数は量の比」ではないからである。 ──学校数学は「数は量の抽象」である。

    歴史的経緯から学校数学は「数は量の抽象」になった。 この歴史的経緯は数学とは別の問題であるので,<「数とは何か?」への数学の答え>論に混在させないよう注意しなければならない。
    学校数学の「数は量の抽象」については以下のテクストで論じているので,参照されたい:
      『数は量の比──「数は量の抽象」ではない』
    『量とは何か?──学校数学の「量」と数学の「量」』