Up CAP制は,己の点取り主義に向けよ 作成: 2006-09-03
更新: 2006-09-03


    国立大学法人は,評価委員会/文科省による「大学評価」にパスしなければならない。 これを,
      (1)「中期計画・中期目標」を作成し,
      (2) この内容を実現する作業の進捗状況を報告する
    という形で行う。

    「中期計画・中期目標」では書き方に定型があり,点数をもらうための必須項目がある。 この結果,「中期計画・中期目標」の基調は,どの大学も同じになる。言い換えると,横並びが実現される。


    必須項目の完備は,単純計算の上であれ実際であれ,労働量の爆発になる。
    ──以下に,必須項目のうちから「教員の労働量爆発」につながるものを拾い上げてみる:

    大学の地域特性
    を出すことに取り組む
    (北教大では,「北海道学」「へき地教育」)
    一般陶冶および実践的能力陶冶色を強めた教育課程をつくる コアカリキュラム
    共通授業
    重点化された教育
    に取り組む
    情報教育(コンピュータリテラシー教育)
    外国語教育
    脱「講義」
    に取り組む
    少人数教育
    参加型授業
    個別指導
    ティーチング・アシスタントを使用
    学生指導・支援
    を制度的に行う
    シラバスを整備する
    GPA制度とCAP制により履修指導を行う
    学修相談指導 (カウンセリング) を行う
    指導教員 (アカデミックアドバイザー) 制度
    オフィスアワー制度
    情報メディアの活用に取り組む
    その他各種学生支援環境を整備する
    進路指導,就職支援
    に取り組む
    職業体験型授業
    インターンシップ (社会経験・実地研修)
    キャリア教育を実施する
    これを行う体制を構築する
    学生の課外活動促進
    を制度的に行う
    社会活動(ボランティア活動) の促進
    サークル活動の促進
    これを行う体制を構築する
    社会人学生の受け入れ
    に取り組む
    社会人学生に対策したコース・授業づくり
    長期履修学生制度をつくる
    サテライトを運営する
    留学生の受け入れ
    に取り組む
    留学生の受け入れと支援の体制を構築する
    留学生に対策したコース・授業づくり
    正規でない授業
    を各種行う
    学部講義への受入
    出前講義
    公開講演
    オープンキャンパス
    地域連携
    に取り組む
    地域連携活動 (地域の教育・文化の振興に関わる活動) を行う
    地域連携プロジェクトを実施する
    地域自治体の生涯学習の取り組みに参加する
    各種審議会,委員会,研究会に参加する
    地域人材 (地域活性化に資する人材) 養成に取り組む
    大学主宰のイベントを催す
    講演会・講習会活動を行う
    公開講座を実施する
    地域連携活動のための大学施設利用をコーディネートする
    社会貢献サービス事業を行う
    各種交流事業に参加する
    これらのことを行う体制を構築する
    産官学連携
    に取り組む
    上と同様のことを行う
    国際貢献/協力/交流
    に取り組む
    大学間の交流協定を結ぶ
    国際学術交流を行う
    留学生双方向交流を実施する
    国際開発協力事業に参加する
    これらのことを行う体制を構築する
    社会人教育
    を実施する
    社会人研修
    リカレント教育
    生涯学習教育
    初等・中等教育との連携
    に取り組む
    大学見学の受け入れ
    出前講義を行う
    学生獲得
    (受験生確保・定員確保)
    に取り組む
    入試広報に関わる仕事をする
    大学説明会/オープンキャンパス/1日大学を担当する
    入試相談を担当する
    高校回りをする
    大学見学/キャンパスツアー受け入れの企画を担当する,あるいはこの企画の実施に協力する
    アドミッション・ポリシー,多様な選抜制度,入学機会の複数化,受入の拡大に対応した入試業務を行う (前期日程試験,後期日程試験,AO入試,推薦入学・編入学・留学生・社会人の特別選抜)
    FD
    に取り組む
    自己点検・評価を行う
    学生による授業評価 (アンケート) に応える
    新任教員研修を担当する
    このことを行う体制を構築する
    授業の経済化
    に取り組む
    双方向遠隔授業を行う
    各種団体・機関との連携 同窓会組織の連絡・協力に取り組む


    これらが,いままでの教育・研究の本務と雑用の内容に加えられる。
    しかし教員は,いままで余裕でやってきているわけではない。たいていの教員は,仕事に時間・体力を目一杯使ってきている。
    すなわちこれは「油と教員は絞るほど出る」の政策。

    どうしてこんな無茶苦茶を出してこれるのか?
    これは,「教員には裁量労働制」「教員の兼職・兼業を柔軟に認める」の悪用。
    「1日8時間労働」のところでは,出て来ようがない。


    これを課された方は,対応するにしても,テキトーに対応することになる。 実際,まともに対応したら,本業を放ったらかすことになる。──これは本末転倒。

    上のリストの中に「CAP制」のことばがあるが,これは単位数主義の学生に対し

      そんなにたくさん授業をとって,本来の勉強ができるわけないだろう!

    と叱るものだ。 しかし,「大学評価」で点数主義に陥っている大学は,学生に対して「CAP制」を言える立場ではない。 「CAP制」のことばは先ず己に向けよ,ということになる:

      そんなにいろいろ項目並べて,本来の教育・研究ができるわけないだろう!


    ちなみに,上のリストの中には「学生の課外活動促進を制度的に行う」があるが,昔なら

      学生は勉強だけしていろ! (本分をきちんと務めろ!)
       あれこれ他のことに手を出す余裕/権利が,おまえにあるか!

    があった。いまの時勢ではこれは暴論にされてしまうが,すこし経てばこれが正論として受け取られるようになる。(「愚が繰り返される理由」)
    同様に,すこし経てばつぎが正論になる:

      大学は教育・研究だけしていろ! (本分をきちんと務めろ!)
       あれこれ他のことに手を出す余裕/権利が,おまえにあるか!」