Up 中国のサバク化傾向は? 作成: 2023-12-09
更新: 2023-12-10


    つぎの地図は,中国でサバク化が今後見込まれるのは,東北地方と華北であることを示す。
Google Map から引用


    実際,その乾燥地には,地下水スプリンクラー農地──アメリカ乾燥地帯の農地の典型──も,ちらほら見える:


    地下水汲み上げの農地は,<土壌劣化 → 耕作放棄 → サバク化>が後に控えている。

    但し,そのサバク化を急速にしているのは,資本投入型()収穫の自然蕩尽である。
    アメリカやオーストラリアのサバク化は,この場合である。
    しかし中国には,資本投入型()収穫に進ませない構造が体制のうちにある。
    それは,農民固定の身分制度である。


    中国は,農民の子として生まれると農民戸籍になる。
    中国の農民一人当たりの耕地面積は小さい。
    農民の生活水準は低く,農業では生活が苦しい。
    ここに,農民工制度というのがある。
    農民は,30代を上限として,都市に住んで働けるという制度である。
    農民工ということで色々差別はあるが,農業をするより稼げる
    こうして農家の若い者は,農民工として都市に出て働き,家に仕送りをする。

    若夫婦もこれをするわけだが,ここに子どもは都市の学校には入れないという規則がある。
    よって,子どもが学齢期になったら,家に返す。
    子どもは祖父母と暮らして大人になる。

    こういうわけで,中国の場合,資本投入型()収穫農業は起こりにくい構造になっている。
    実際,資本投入型を中国の農村で行うことは,農民の狭い土地を取り上げ,農民を無産者にすることである。
    これは農民身分制度の破壊なので,あり得ないのである。


    中国は,農民固定の身分制度によって,農村が貧しいままであるしかない構造になっている。
    一方,都市民──都市戸籍者──は,格差を拡大しつつだが,生活水準を上げていくことになる。 (いまはまだ日本に比べて貧しい。),
    彼らは全人口14億のうちの4億弱だが,それでもこの数が生活水準を上げていけば,食料需要は莫大なものになる。
    中国はこの需要を輸入で賄うことになり,実際,現在このステージに入っているところである。
    中国の帝国主義的世界進出には,ちゃんとお家の事情がある。


    前置きが長くなったが,中国の「サバク化」事情を考えることは,以上について考えることなのである。

    第一に,中国が資本投入型()収穫農業の起こりにくい構造になっているということは,急速にはサバク化に進まないということである。

    第二に,中国の身代わりとして,サバク化に進む国・地域が出現するということである。
    食料輸入国と輸出国の関係は,「輸入国に代わって,輸出国が自分のところで自然蕩尽型食料生産を行う」である。
    「輸入国に代わって,輸出国が自分のところのサバク化を進める」である。

    日本は中国の食料輸入を迷惑顔で見ているが,中国は日本のやってきたことを追っているに過ぎない。
    日本は「食料自給率35%」を憂いているが,それは「これまで自然蕩尽の()収穫をあまりひどくはやらずに済んできた」ということでもあるわけだ。