Up 風とは何か 作成: 2023-01-02
更新: 2023-01-02


    風は,微視的には空気粒子の運動であり,巨視的には空気 (空気粒子の集合) の運動である。
    空気の運動は,空気粒子の運動の総合である。
    ここで「総合」の意味は,<均衡の実現>である。

    <均衡の実現>は,統計力学の公理である。
    なぜ公理かというと,<均衡の実現>は説明できないからである。
    硬貨を放り投げたときの表裏の出方は,五分五分になる。
    この五分五分は,説明できない。
    だから,公理にする。

    統計力学が<均衡の実現>を述べることばは,「ランダム」である。
    運動する個の系は,<個が最もランダムに並ぶ状態>に至り,そこで定常となる。
    統計力学は,これを「エントロピー増大則」に表現する。,
    <均衡の実現>の公理を,「エントロピー増大則」のことばで表現するというわけである。


    風は空気の運動であり,空気の運動は空気粒子の運動の総合である。
    このとき,空気の運動が専ら<エントロピー増大則の実現>であれば,風はやがて止むことになる。
    しかし,風が止むことは無い。

    風が止むことが無いのは,エントロピー増大則が間違いということではない。
    風が止むことが無いのは,エントロピーを減少させる (ストレスをつくる) 勢力が存在しているからである。

    地球の活動がそれである。
    太陽の活動がそれである。
    そして,宇宙の活動がそれである。
    これらは,空気を絶えずゆさぶり,風を創出する。

    太陽・宇宙による<攪乱>は,太陽・宇宙から地球に飛来する物質と電磁波がこれの媒体である。
    相対性理論は重力波の存在を含蓄するが,これが現実のものなら,値は小さいが「地球に飛来するもの」のうちに加えることになる。


    空気の運動は,空気粒子の運動から説き起こしていくことになる。
    このとき,「圧力」の概念を「空気粒子の衝突」から導く。

    空気は,均衡実現の形態が互いに異なる<部分>の集まりになる。
    これら<部分>は,圧力の形態 (向きと大きさ) でも互いに異なることになる。
    そしてこれの現象は,<部分>間の複雑な押し合いへし合いである。


    気象学は,「複雑な押し合いへし合い」の考えが無い。
    風を「圧が強い方から低い方に流れる」と定める。
    この場合,風の流れはつぎのようになる:
    しかし,実際はこうはならない。
    風は,むしろ等圧線に沿って流れる。
    そこで気象学は,圧が強い方から低い方への真っ直ぐな流れにはならない理由を捻り出す。
    そして「コリオリ力」なんかを持ち出すというわけである。


    上の図の高気圧と低気圧は,残りの空間が真空なのではない。
    空気がびっしり詰まっている。
    圧力の歪みで生じる風は,このびっしりつまった空気の押し合いへし合いである。
    そしてそれは,押し合いへし合いが最も軽減される流れとして実現する。
    その形は,渦である。
    そしてこの渦は,流れが等圧線に沿う格好になる。