Up 国が国を略奪する方法 作成: 2024-03-12
更新: 2024-03-12


    ロシアが,ウクライナからクリミアそして東部を略奪する。
    これを正当化するロシアの論理は,「住民がウクライナからの独立に決起し,ロシアの支援を求めている」である。

    アメリカがむかし中南米の国を自分の属国にしたときの手法は,クーデターを起こさせるである。
    クーデター政権を認めその政権を支援するという方法で,その国を取る。


    中国の政権がレアメタルの国家管理に乗り出した。( 中国のレアメタル政策)
    そのレアメタルを好きなようにしてきた列強が,これまで通りを続けるにはどうするか?
    レアメタル生産地はいずれも辺境にあり,そこは民族自治区である。
    よって,独立を促し,列強に支援を求めることを促す,という方法になる。

    もちろん,こんなことは起こらない。
    いまの中国は強国だからである。
    しかしこの手のことは,世界のあちこちで起こっている。
    民族紛争は,いまも昔も列強が起こしているのである。


    中国は,外向きでは,世界侵出を企て,他国の民族問題を利用する国である。
    しかし内向きでは,列強に自国の民族問題が利用されることを警戒する国である。
    中国の圧政は,民族自決のムーブメントが起こることへの危惧が裏返ったものである。

    ひとは,国の関係を正義と悪で考える。
    しかし,国の関係は,様々な思考回路の関係なのである。

    外務省なんかは,立場上,このことをよく知っている。
    対外関係を「落としどころ」で考える。
    そしてこれが,国の関係を正義と悪で考える者たちから, 「弱腰」「売国」と非難されることになるわけである。


    ひとはなぜ国の関係を正義と悪で考えるのか?
    正義と悪の考えに洗脳されているからである。
    洗脳する者はだれ?
    ひとを洗脳したい者と,正義対悪で人を煽りたいメディアと,そして互いに同調したがる人間の(さが)である。


    備考
    日本もかつては, 「民族」が利用される立場になったことがある。

    江戸末期から明治のはじめ,日本は北海道開拓に邁進した。
    理由は,ロシアの南下である。
    これにアイヌの存在がつぎのように係わってくる:
      本多利明 (1791)
    ‥‥‥ 安永年間より赤人 魯斉亜国人なり の大舶蝦夷の奥へ漂着に(なぞら)い、年々渡り来りて交易を乞う事頻なりと。
    其の土産の品々は、和蘭船持渡の品類と異る事なしといえり。
    段々と土人と親しみふかくなりて、彼国の掟を教示し又は宗門などを勧ると風説あり。‥‥‥
    今既に開国の時至りたるか
    魯斎亜より東蝦夷諸島を開業をなせば、此時に当りて日本にも異国との境界を建て、関所を(かま)え、要害ありて武威を()に於ては、異国へも輝きす、蝦夷土人も尊信せんは疑いなし。
    誠に国家全するの祈禱と成て目出度かるべし。

    アイヌは明治に入って終焉し,"アイヌ" が残る。
    革命がブームになると,その "アイヌ" が利用される。
    "アイヌ" は,革命の主体となる「虐げられた者たち」に位置づけることができ,そして「民族自決」が「反日」の形になるからである。
      結城庄司 (1972)
     天皇軍は、原住民アイヌを、北辺に封じ込め、戦いが完全に勝利したかのように、歴史を歪曲しているが、そのごまかしは一九七二年に、原住民精神をつらぬく人々によって粉砕された。
     「原住民精神」、それはアイヌ共和国創造への胎動である。‥‥‥


    "アイヌ" の政治的利用は「アイヌ法」に至って終わる。
    そして,「アイヌ法」が呼び込む "アイヌ" 利権のステージに入る。
    この最終形は, 「北海道観光のアイテムとして "アイヌ" が残る」である。


  • 引用文献
    • 本多利明 (1791) : 最上徳内『蝦夷国風俗人情之沙汰』(『蝦夷草紙』) の「序」
      • 須藤十郎編『蝦夷草紙』, MBC21/東京経済, 1994, pp.21-24.
    • 結城庄司 (1972) :「アイヌ独立の魂は、呪いの戦い、怨念と化し、自然を背景に燃え続けて来た」」
      • 太田竜「御用アイヌへの挑戦から始めよ」(1973) に「全文引用」。
        太田竜『アイヌ革命論』(1973) に収載, pp.166-188